パラオはトラディショナルな男女別の議会がいまだに運営されているせいか、地方自治の延長で有志が集まって何か非営利の活動をするコミュニティ開発的なプロジェクトが様々立ち上がっています。同僚が乳がん検診の啓発運動を始めて、ちょいと頼まれてイラストロゴみたいなのを作りました。
女子有志の会で運営してるってことで、まあ、聞いた瞬間からやばめな感じですね、ええ、そうです。この手の素人集団というクライアントはデザイナーが関わりたくない相手ナンバー1。その場その場で好き勝手なこというけどどこにも向かってないやつです。
とはいえ、私のその同僚はあながち素人ではない。普段は財務ですが、すでに私と色々仕事をやっている。そんなにひどい相手じゃないんです。
とはいえ、彼女もこの有象無象集団でどうやって同意形成をしていくかは初めて。私もパラオのこの手の集団が実際にどの程度手間がかかるのか知りたかったのでやってみました。
案の定、振り回されそうになったので、初回だけ言われた通りに、2回目からは作業前にどこを目指しているのかを決めて欲しいという意図を説明してもらいました。(その会議には同僚にメールで要点を伝えて私は出席しない、パラオ語だし)
私からのポイントは、
- ピンクリボンキャンペーンの多くは胸を取り扱うけど性的な表現が少しも入らないように注意する
- 共感を得るために誰でもない特徴のない記号化された人間がよいが、同時にパラオの女性であるという点を表現しなければ共感されない
- 人間が登場する場合、レイシズムになってはならない。(細かい描写を含めれば必ず誰かの特徴を捉えてしまう。)国連広報関連でで使用されているイラストはこの点についてクリアされている、クリアするために様々なアイデアを細かく使用しているので参考にして欲しい
最初に同僚からオモガット(パラオで女性が最初に子供を産んだ時に行うセレモニー)のポーズを使いたいという要望を受けました。伝統的にはブラは使用せず胸を露出するものだったからそれで乳がん検診とパラオを結び付けられるんじゃないかということでした。
でも、今回、私も初めてパラオ人女性を表現するのにウドウド(マネービーズのネックレス)を使わなかった。途中で入れて欲しいという要望も受けていたけれど、人物を特定させないという話、全てのパラオの女性に検診に行って欲しいという観点から、特定の人に絞られてしまう表現は避けましょうとなりました。同僚曰く、あれ、かなり特定してしまうようです。黄色とオレンジの大きいやつをつけている人は伝統的身分が高い。小さいウドウドは低い。また、つけてない人もいる。
ピンクリボンで囲ったのは私の提案。まあ、一般的にはこうだよね、という。
こういうのって、記号にしていい部分もあればダメな部分もある、逆にパラオというアイデンティティと切り離すことが差別になるようなパート(主に肌の色)、胸の表現を強調せずにさらっとみれる感じになるのか、など、とてもデリケートな絵面だな と思っています。
結局どうだったかというと、最後は割とすんなり同意が取れたというか、最終的に同僚の彼女が引っ張った感じ。そう、話して話して話して、まとめたところで最後誰かが引っ張らなあかんのですよ。最後に引っ張る勇気と責任感があるかどうか・・・。
直して直して最後に元に戻ったんだけどね 笑
あれ? 最初のがよかったな って。
あんまり自分たちがいったことに妙なプライド持ってる人たちじゃなくてよかったね。