度々、日本の男女格差世界ランキングが下位な話でツイッターが盛り上がっているが、途上国で働く限り、日本の男女格差が職場において深刻な状況にあることに疑いはない。

痴漢がある国は日本以外でもある

Yahoo news : 水原希子「痴漢は日本独特の文化」発言でネット上で大論争の背景

と、こんな発言が論争になったが、JICAボランティアの派遣国で女性隊員が公共交通機関で体を触られるケースは実は、少ないがある国ではある。また、下着泥棒がでる国、女性を誘拐して結婚するのが普通の国など、中には女性の派遣が難しい国もある。

痴漢が多発する国は女性の社会進出が遅れており、日本と同様に男性が女性を所有する文化が背景に存在する。

私が派遣されたボツワナも現在いるパラオも男女格差はあるものの、女性が男性に所有される文化が薄い。というか婚姻制度の利用がそもそも稀で、「他者の人生を所有する」なんて彼らは考えたことがない。故に、痴漢などジェンダーに所以する犯罪被害はない。強盗などの犯罪は男女どちらもあう。

逆に日本のように夫を旦那と呼び妻を家内と呼ぶ国は自然に「男性が女性を所有する」、この無意識の感覚が現地で浮き上がってくることがある。

THE日本の男は気持ち悪い

コロナで2年間国境がほぼ閉じ、日本から新しい人がくることがなく、パラオどっぷり仕事を続け昨年から渡航してくる日本人が微増。結果、久々に純正の「THE日本の男」に会う機会が増えた。言葉の端々に偏見と女性を見下した物言いを感じ、日本の男性ってこんなに不快だったっけ???という感じである。気持ち悪さが半端ない。

コロナ期間中はベテランしか島内にいなかった。JICAは女性職員が日本でもまだ多い方だし、コンサルなどはそれなりに海外ドサ回りしてるので女性リーダーと仕事をしている経験が多く、THE日本の男みたいなのはあまりいないのだが、パラオは駐在歴なしでくる日本人も多く、このあたりがTHE日本の男がよくいる層。

今、私が日本の昔の職場に戻ったら、超絶不快に思うだろう。変わったのは私の方。

どこの公館かは伏せるが、大使館で働いていた同年代の女子が「日本の男は気持ち悪い」と言っていた意味が、また、どこの隊員かは伏せるが、女子隊員が男子隊員にアプローチされて「気持ち悪い」と言っていた意味が、今になってやっと理解できた。

前者はすでに海外経験が長く、日本人以外とずっと働き、日本大使館で日本人と仕事を始めたところだった。日本の男性は女性の労働者を同等に扱わない。特に年齢が上がれば上がるほどこの傾向は顕著だ。そして、本人たちは自分は平等に扱っているつもりでいる。大使館は日本社会なので女性は自然に下に扱われる。彼女が感じた気持ち悪さはこれだ。

後者の男性隊員は若かったが、今思えば、女子を自分より弱いものとして扱おうとする傾向にあった。女子隊員がわが「対等なコミュニケーションが取れていない」と感じているのに彼は彼女のことを「好きだ」という。その好きの正体は「自分が支配できそうな女」だからで、彼女が感じた不快感は、おそらくこれだ。そして彼女が不快感を顕にしても男性隊員は気づいてすらいなかった。彼女は私よりずっと若い世代で、その世代は私たちより敏感に感じ取ることができていたんだと思う。

レイシストの本質

私の職場では以前も書いたが、「明日から来なくていい」と言われてたシニア・ボランティアがいる。最近、時間が経過したせいか当時の話をする人がいるのだが、彼のことを「レイシスト」と言っている。おそらく、彼はレイシストではなく、女性を見下した態度をとっていたと推察する。

くだんのSVが派遣された当時、部署には部長含め女性しかいなかった。SVの年代では職場の女性は雑用・事務、男と対等な仕事はしていない。おそらく彼は自然に部署の部長含め女性を下に扱い、その態度に本人も気がついていなかったのだろう。

パラオ人の場合、男女差別に職場で遭う経験はない。自分が女だから下に扱われたなんて夢にも思わないのだ。どちからというと、人種・国籍理由で下に扱われることが多かっただろう、だから、部署全ての職員を下に扱った彼のことをパラオ人は「レイシスト」と呼ぶのだ。

ちなみに、このSVは日本人には慕われていた。物腰も柔らかく、何か問題を起こしそうに見えなかったそうだ。(私はよく知らないので人伝て。)当時の話を聞く限り、SV自身もなぜ切られたかがわからなかったそうだ。

人種・国籍理由で下に扱われる経験を途上国の人たちは私たちよりはるかに身近に経験している。だから見下した態度にも敏感だ。特に外国人から見下された場合、「レイシスト」と相手のことを表現する。

当時のことを振り返りながら、パラオ人は「座ってるだけで何もしない程度のことならクビにはしなかった。JICAボランティアは無償できているんだしね。ただ、彼の場合はこちらのスタッフに害があったからリリースした」と言っている。

女性が多い職場がリアルな現実としてある

パラオの職場は女性が多い。パラオは政治家や大臣こそ男だらけだが、現場管理職は女性が多く、また、学位が要求されるような高度な仕事をする役割はほぼ女性が占めるため、平均収入は女性の方が高い。現場の女性とうまく働けないとこの国では何もできない、そして、よく日本人男性は問題が起きるとさらに上の役職にいる男性にすがるのである。このやり方が軋轢を生んでいる。現場の女性を下に見ているからこそできる。

パラオ人もこの傾向が自分たちと違うことに気がついている。パラオにいる外国人は米国、フィリピン、バングラデシュ、日本、台湾、韓国などだが、大体まだまだ男性社会で(このラインナップで行くと一番まともなのは台湾、総統は女性だし)、どこと比較してもパラオの方が女性には働きやすいと思われる。

ボツワナの博物館はダイレクターの過半数が女性で働きやすい!と思ったが、パラオきたらダイレクター全員女だったのは笑った。

各国もパラオのことをよくわかっているのか、現在、台湾とオーストラリアは駐パラオ大使が女性。パラオも他国のことはわかっているので、駐日パラオ大使は老齢な男性を選び、国連大使は若手女性で、これも戦略的と思われる。

人は人を所有できない

ボツワナもパラオもめんどくさい誘いをしてくる輩はいる。特に収入低い職業の男性はものすごい頑張ってアプローチしてくる。必死に高収入の女性を捕まえようと頑張るのは別に気持ち悪いと感じない。まあ、拒絶するけどね。

「レイシスト」とは人を人と扱わない人のこと。痴漢というのは勝手に他人のプライベートゾーンを触る行為であり、相手を人間とみなしていないからできる。「痴漢がある」は、日本の社会構造は明らかに男性に偏ってできているかを測る一つの指標だと思う。

この問題は「人は人を所有できない」ということを日本人が完全に理解するまで続くんだと思う。